2016年12月08日

丹波は大和朝廷の鉄資源入手窓口

今日大和朝廷成立に至る仮説として、多くの識者から支持を集める白石太一郎氏の仮説がある。だが私は、まったくありえない仮説として、この説に反論する。

下記に記したのが白石太一郎氏の著書「古墳の語る古代史」の一節である。

「古墳出現の前提となる広域の政治連合の形成は、朝鮮半島南部の弁辰(伽耶地域)の鉄資源や、さまざまな先進文物の入手ルートの支配権をめぐる争いと関係している。すなわち、このルートを一手に掌握していた奴(な)国、伊都(いと)国など玄界灘沿岸地域と争うために、これらの国よりさらに東方の豊前、吉備、讃岐、畿内などの瀬戸内海沿岸各地のが同盟関係を結んだ。畿内・瀬戸内連合による玄海灘地域の制圧の結果成立したのが、邪馬台国を中心にする、いわゆる邪馬台国連合にほかならない。」

私の反論である。


第一点は大和朝廷の政治的支配は、大和朝廷成立の当初から九州の一部に及んでいたことである。それは倭国大乱より前である。

第二点は畿内大和朝廷の鉄資源入手ルートは、瀬戸内海経由ではない。入手の窓口は丹波である。

鉄資源入手の経由ルートは朝鮮半島から対馬、壱岐を経由し北九州に至る。そして山陰の日本海側を経由して丹波に至るのである。北部九州を経由したことは間違いないが、北部九州の一部は大和朝廷成立の当初からすでに、大和朝廷の政治的影響下にある。

『先代旧事本紀』の国造本紀は、神武の時代対馬に建彌己己命(たけみここのみこと)を津島県直(つしまあがたのあたえ)として任命する。
大和朝廷成立直後に対馬に県主(あがたぬし)が置かれるのである。半島へのルート確保の意図がうかがえる。神武時代の任命として国造本紀に登場するのは、九州では対馬と宇佐のみである。ただし対馬は国造ではなく県主である。国造本紀の中で県主が登場するのはここ対馬のみである。
対馬市厳原(いずはら)町には建彌己己命を祀る銀山上(ぎんざんじょう)神社がある。

また『魏志倭人伝』は伊都国に一大卒を置き、周辺諸国を検察していたとする。諸国はこれを畏れ、それは刺史の如くであったとする。刺史とは中国王朝が派遣する監察官である。魏の時代には郡太守に勝る権限を持ったとされる。
また「世有王、皆統屬女王國」とする。皆とする訳であるから、伊都国の王は代々女王国に統屬していたのである。
「統屬」という言葉は、支配と被支配の関係である。連合などという対等の関係などではない。この記述は二四〇年の見聞に基づくものであろうから、それ以前から伊都国王は何代にも渡って、邪馬台国すなわち後の大和朝廷に統屬しているのである。大和朝廷の政治的影響は北部九州に及んでいるのである。

大和朝廷の鉄資源入手の窓口

大和朝廷鉄資源入手の窓口は丹波である。丹波は早くから大陸と交易を行っている。丹後半島の西側に久美浜湾が広がる。久美浜湾は自然の良い港となる場所である。ここ久美浜湾の日本海側に函石浜遺跡という、縄文から室町時代まで断続的に続く遺跡がある。この遺跡からは貨泉や銅鏃、鉄鏃などの大陸からの輸入品が採取されている。中でも貨泉は紀元八〜二三の新王朝時代の物であり、ここは古くからの港湾機能を有した遺跡と考えられている。
一方興味深いのは『日本書紀』の垂仁紀に田道間守(たじまもり)が香果(かぐのみ)を求めて常世(とこ)の国へ出かけた事を記す。函石浜のある地元では、田道間守が帰国にあたってこの函石浜の港に上陸したという伝承を残す。もしこの伝承が史実を伝えるものであれば、ここは大和朝廷にとって大陸への窓口なのである。

それではなぜこの丹波が、大陸との交易の窓口となったのかである。
私は二つの理由があると考える。
一つは、貨泉という一世紀代の大陸系遺物に見るように、この地の人たちは早くから大陸に至る航海技術を有していたことである。
二つ目は、丹波は交易の対価となる水晶加工品の産地であったことによる。鉄資源入手には、何らかの交換の品物が必要である。大陸の人が欲しがる日本列島産の産物は、そう多くはなかろう。数少ない交易品の一つとして水晶の小玉が用いられた。衣服に縫い付けて飾りとしたとされる。弥生中期の峰山町奈具岡(なぐおか)遺跡には水晶を加工した玉造工房と、鉄器を加工した遺構や鉄器が出土している。丹波では鉄素材入手のための、交易品となる水晶加工製品の生産が行われていたのである。また入手した鉄素材の加工も行われていた。


大和朝廷はこの丹波を直接支配している

私が卑弥呼とする宇那比姫命の兄、建田勢命が丹波支配に赴いている。そのことを記す系図がある。『勘注系図』である。『勘注系図』は次のように記す。

「大日本根子彦太瓊【おおやまとねこひこふとに・孝霊】天皇御宇、於丹波國丹波郷、爲宰以奉仕、然后移坐于山背國久世郡水主村、故亦云山背直等祖也、后更復移坐于大和國」

建田勢命が孝霊の時代丹波の宰(みこともち)と為って丹波に赴いたとする。
建田勢命は宇那比姫命すなわち卑弥呼の兄である。王権の最有力者が何のために、丹波支配を行ったかである。それは丹波が大陸への窓口であり、鉄資源などを入手する重要な拠点であったからである。
更に建田勢命の子供建諸隅命(たけもろずみ)も丹波支配に当たる。建諸隅命は亦の名を由碁理(ゆごり)と称す。『古事記』開化天皇条に、「この天皇、旦波の大県主、名は由碁理が女、竹野比売を娶りて生みたまへる御子、比古由牟須美命(ひこゆむすみのみこと)」とある。由碁理は竹野媛の父親で、竹野媛のまたの名を天豊姫と言い『魏志倭人伝』の台与である。卑弥呼の後に女王になった台与の父親は建諸隅命で、この人物が丹波大縣主として丹波支配に当たっている。建田勢命、建諸隅命という王権の中枢の人物が直接丹波を支配したのである。それは大和朝廷にとって、丹波は鉄資源入手のため大陸につながる重要な拠点なのである。

建田勢命が館を構えたとする伝承地がある。

私は2005年頃、初めて丹波を訪れた。その時たまたま出会った地元の方に、建田勢命の館跡を訪ねると、親切に現地近くへ案内してくださった。そのときは館跡とされる場所を見下ろす林道上に案内された。林道から見下ろす崖下あたりが伝承地と教えられた。しかし竹やぶや獣除けフェンスに阻まれ現地に降りることは出来なかった。
2015年9月再度ここを訪れた。今回は林道の下側からアプローチした。山塊から流れ出た小さな谷がやや開けた扇状地を形成する。その山際の竹藪の中に土段状の場所を見た。一見すると方形墓のようにも見えるが山側はそのまま山の斜面へと続くので方形墓ではない。
ここが建田勢命の館跡であろうと推測した。
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現地を訪れる前はなぜこんな場所にという疑念があった。現地を見て疑念は晴れた。ここは小さな谷が東から流れ出るやや開けた場所である。その北側斜面を背にした南向きの場所である。このあたりでは数少ない南向きの立地となる。しかも前を小さな小川が流れ、水の便が良い。しかも古い時代には、久美浜湾に注ぐ川上谷川の河口が、この近くまで及んでいたとされる。このあたりは波静かな湾の最深部で、船の出入りには都合の良い場所である。
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丹波支配の拠点は建諸隅命の時代になると現在の京丹後市竹野町に移る。ここもまた、かっては竹野川河口に広がる入り江か潟湖が有ったとされる。

建田勢命の館跡とされる場所から300mほど南の矢田神社は、建田勢命とその子供建諸隅命を祀る。
神社伝承によれば、垂仁の時代川上麻須が創建したとされる。『勘注系図』によれば川上麻須は建諸隅命の子ともされる。
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posted by 曲学の徒 at 14:38 | Comment(1) | TrackBack(0) | 丹波と大和朝廷
この記事へのコメント
明けましておめでとうございます。
本年も知識の数々刺激を受けて慰霊が進みそうです。宜しくお願いいたします。

かなり記事が増えていたりお返事頂いていてびっくりしました。
私の中で色々考えた事が記事の中との相性がとても良くこの先が楽しみです。

今年はかぐや姫が表舞台に出てくると思っていまいたけど私のマークしていた竹野姫がトヨなんですね、納得ですし丹波という事と道主に繋がる事も嬉しく思います。
歴史ではどうも入り込められていそうですがシンプルに8代孝元さんから何か風向きが変わってしまっているのでしょうね。かぐや姫月から来たのではなく婿候補が海から来て何か本筋かずらされてしまっているように考えています。そこに尾張と和爾の合作が物部の中でも変な方にと。和爾日子さんは上手く消えてしまってその妹さんに入った他の一族が絡んでしまっているようにもそう妄想しています。

また全く知らなかった久見浜湾ですか、あそこは地形的にも大事な地なのは地図をみてもその通りに思います。
さすがですね。

前の記事の東大寺遺跡の環濠の件も地形をよく理解しているなあと思いましたね。その場所の高さで時代も妄想出来ます。高い所はすでに専住者がいるのでだんだん低い所に水場がなくなりおりてくるイメージを持っています。山の神が春になると麓に下りてくるように。わにさん達は多分麓の小高い所、高尾張さんたちは高い山の方と秋にはそれぞれの融合での収穫もあったと思います。

地形に大昔から注目していた研究者さんのご意見はとても有益です。港でないと技術や文化の融合はあり得ませんし、また当時はお金もないので物々交換が全てです。何もない所には何もこなかったはずです。来る所にはひっきりなし。それが自然ですし、納得出来ます。
Posted by りひと at 2017年01月16日 16:05
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