2017年06月19日

出雲王権の歴史

大国主を祭る出雲氏と大神氏(おおみわし)

 私は『日本書紀』の中で語られる、大国主と『出雲風土記』に登場する大国主の関係が今一つ解らなかった。
島根県の出雲大社と奈良県の大神神社(おおみわじんじゃ)は、何れも大国主を祭る。
出雲大社の祭祀を行うのは、出雲国造(いずものくにのみやつこ)の千家家と北島家で出雲氏である。一方、大神神社(おおみわじんじゃ)の神官家は大神氏(おおみわし・大三輪氏)である。
何れも祭神は大国主であるが、この出雲氏と大三輪氏との関係が今一つはっきりしなかった。

中田憲信という人が著した諸系譜第1冊に、伊勢津彦之裔(いせつひこのえい)とする系図が示される。この系図の前半は出雲大社を祭る、出雲氏の系譜とほぼ同じである。この系譜の最初は意美豆奴命(おみずぬのみこと)という人物である。次を天穂日命(あめのほひのみこと)とする。
一方出雲国造(いずものくにのみやつこ)である出雲氏の最初は、天穂日に始まる。意美豆奴命(おみずぬのみこと)は登場しない。

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このあまり聞きなれない、意美豆奴命(古事記では淤美豆奴神・おみずぬのかみ)によって、出雲氏と大神氏の関係が明らかになった。
『古事記』は次のような系譜を伝える。
淤美豆奴神(おみずぬのかみ)、天之冬衣神(あめのふゆきぬのかみ)、大国主神(おおくにぬしのかみ)と続く系譜である。淤美豆奴神を大国主の祖父とする。
この大国主に続く子孫が、現在の奈良県桜井市の大神神社(おおみわじんじゃ)を祭る大神氏(おおみわうじ・三輪氏)である。

伊勢津彦之裔の系図は意美豆奴命、天穂日命とするが、天穂日は出雲の人ではない。
天神とされる高皇産霊(たかみむすひ)によって、出雲を平定するために派遣された人物である。天穂日は出雲に取り込まれ帰ってこなかったとする。更に天穂日の子、大背飯三熊之大人(おおそびみくまのうし)を派遣するが、これもまた出雲に留まって戻らない。
したがって伊勢津彦之裔系図は、意美豆奴命から天穂日命に続けるが、この関係は親子ではない。

出雲市西園町の長浜神社は、八束水臣津野命(やつかみずおみつのみのみこと)を主祭神として淤美豆奴命(おみずぬのみこと)を祭る。淤美豆奴命は八束水臣津野命(やつかみずおみつのみのみこと)の子とされる。八束水臣津野命は『出雲風土記』に登場する国引き神話の人物である。
伊勢津彦之裔の系図は、意美豆奴命に続けて天穂日命とするから、天穂日命は淤美豆奴の後を継いだのである。さらに系図は天夷鳥(あめのひなとり)と続く。この系図によると『日本書紀』が、天穂日の子とする、大背飯三熊之大人(おおそびみくまのうし)は天夷鳥(あめのひなとり)の事とする。

この天穂日の子孫が出雲臣とされる一族で、現在の出雲大社を祭る千家、北島氏につながる。
その後、高皇産霊(たかみむすひ)は武甕槌(たけみかずち・武御雷)を派遣する。武甕槌は稲佐(いなさ)の浜で大国主に国譲りをせまる。かくして葦原中国(あしはらのなかつこく)は天神の治めるところとなったとされる。

出雲王権の歴史

 これらの系譜伝承や神話によれば、最初に出雲を統一するのは八束水臣津野命(やつかみずおみつのみのみこと)である。だが国引き神話に見る、その範囲は現在の出雲市から松江市あたりの、島根県の一部にとどまる。
そして曾孫にあたる大国主が、国域を大きく拡大する。いわゆる大国主の国造神話である。
大国主の妃の出身地は、北は新潟県糸魚川市、西は福岡県宗像市に及ぶ。また『日本書紀』によると大己貴(おおなむち・大国主)の幸魂奇魂(さきたまくしたま)が三諸山に住みたいといったので、そこに宮を営み住だまわせたとする。出雲から大和に移り住んだようである。
三諸山山麓の桜井市から御所市にかけて、奈良盆地東南部には、大国主とその子供たちを祭神とする神社が多く存在する。出雲族の痕跡を残す。
しかしその後天神に武力で国譲りを迫られ、これらの国を天神に受け渡し、出雲に引っ込むのである。

次に大和に進出したのが、天神とされる饒速日(にぎはやひ)である。饒速日の子供とされる宇摩志麻治(うましまじ)の時代になって、同じ天神とされる神武が大和に進出する。最初宇摩志麻治は、神武と戦うが最後は神武に帰順する。神武が大和とその周辺を平定し、ここに大和朝廷が始まる。
神武は、大国主の後を継いだ都味歯八重事代主(つみはやえことしろぬし)の子、姫蹈鞴五十鈴姫(ひめたたらいすずひめ)を皇后として、出雲の権威を取り込むのである。また姫蹈鞴五十鈴姫の兄、天日方奇日方命(あめのひがたくしびがたのみこと)は、神武の食国政申大夫(おすくにまつりごともうすまえつきみ)となって神武に仕えたとされる。食国政申大夫とは後の大臣(おおみ)のこととされる。

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出雲大社を祭る出雲氏は天から派遣された天穂日の子孫であり、大神神社を祭る大三輪氏は出雲を出自とする一族の後裔である。天穂日が天から派遣されるとする「天」がどこであるかは不明である。

また大国主の子孫、美志卯(みしう)は神武時代に素賀国造(今の静岡県掛川当たり)に任じられる。美志卯(みしう)の父、伊佐我は伊勢津彦とよばれ、三重県伊勢あたりに居た。しかし神武が大和朝廷を立てたことにより、日鷲命(ひわしのみこと)に追われ、東国に逃げたとされる。伊勢津彦之裔とされる東国諸国造系図は、伊勢津彦の子孫の系譜となる。

神武以降の時代にあって、出雲氏の沙麻奈媛(さまなひめ)が大神氏の飯勝命(いいかつのみこと)の妻となる。二つの氏族は近い関係にあることが伺われる。またその次の世代、出雲色多利媛(いずもしこたりひめ)は、物部氏の大祢の妻となる。大和朝廷の有力豪族との間に婚姻関係がある。

神武が大和朝廷を立てる前、日本列島の広い範囲を支配下に置いたのは出雲に生まれた王権である。初期の大和朝廷は、この出雲王権の女性を皇后にするなど、この王権の権威に一目置いている。
だが十代崇神の時代になると、天夷鳥が天からもち来ったとする出雲の神宝を取り上げる。これが原因で起きた出雲の内紛を口実に、出雲王権の当主、出雲振根を殺してしまう。これを期に出雲王権は、大和朝廷の完全な支配下に置かれることとなる。
posted by 曲学の徒 at 06:19 | Comment(1) | TrackBack(0) | 葛城の歴史
この記事へのコメント
ありがとうございます。天穂日命さんとは縁がありそう。ですがあまり好きではなく葛藤を抱えています。今年は何か変わらないか?と思っていたのでありがたい記事です。
そう天穂日命さんは出雲に派遣された方で出雲好きになるんですよね。なので元出雲ではないという可能性も。ただし、出雲の神はあくまでも天穂日命との何らかの絆があるので出雲の代表にもまた出雲を納める可能性も持っていたはずです。

で派遣される前はどこの方か?ですね。
実は穂という字と保という字にこだわっておりましてそこも男系の血筋と女系の血筋の代名詞として解釈しております。なので穂は男系のキーワードで解釈してます。この家系が高尾張なのかとも思ってます。男性はそのDNAから強い骨格ありますので派遣されるにもってこいです。今後楽しみですね。

でお伝えしたいのが、高安氏っていう一族いるんですけど(お相撲の高安さんで調べたんですけど)大阪の地名とかにもなっておりまして山の極あたりだったんでお水がいっぱいの時代は船とかで動いている谷とかが好きな一族の様相があるかな?と。で東北やその他地域でも高と付くとどうも高麗高句麗とすぐに連動しかねないんですけど、縄文海進前に高の一族は日本にきていないのか?気になってます。なので高尾とか高梁とか高の付く地名は結構歴史がありそうな気がしてます。

天穂日命さんがそちらに父方があれば面白くなりますね。高安さんも血筋と家系による男ならではの信念とフィリピンの母の愛情溢れる育ちがあり、その文化なり秩序の中で素直に先例に従いただただ努力を惜しまず今に至るようにも思います。高安さんと天穂日命さんはかぶって見えちゃいます。ちょっとミーハーな文章でこちらのコメントに入れるかどうか迷いましたけど、お伝えしたいです。
安東氏の安もあるので安曇にも繋がりますよね。

となると大国主さんと天穂日命さんも二人三脚みたいに思いますね、天穂日命あっての大国主さんだとも。問題は天穂日命さんの奥様とか娘さんが怖い、男ならではの家系になってますので。高尾張の娘がいたら安心ですけどどうもね、大抵連れていかれちゃう巫女的な一族です。

色々な意味で正解が全くないけど常識が正しいとすれば邪道と解釈されてしまうのですけど、正しいかどうかはそれぞれの専門家がその分野で判断することなので皆さん専門家にお任せしてみます。私は一度日本を外からみて疑問を持つ事は自分たちも守ることになると感じてしまったので、どんな説がきても迫害せず、ここは違うって指摘し合える歴史の探求者がいたら器も大きくて安心なのですけど。今、これからが楽しみですね。日本人が疑問に思わないような事に疑問を感じて動く外国人の歴史家にも期待ですね。シュリーマンをアシストしたのが日本の神ならば可能性ありますよね。

今後も記事楽しみにしております。
Posted by りひと at 2017年06月23日 10:14
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